「瞳のなかにある空」 トリコマ
トリコさんは背が高い。軽くぼくの二倍はある。見上げても顔が見えないけど、トリコさんの持つ雰囲気は嘘がないので表情が見えなくても不安はなかった。
だから急に、階段の段差でトリコさんとの身長さがなくなり、顔が間近にあってびっくりした。
精悍な顔、笑うとこどもっぽくなって好きだ。
左の目元に走る傷跡、痛そうだ。目が無事でよかったといつも思う。
青い瞳。髪より深い色をして黒に近いのに、日差しの関係で明るく見える。
空のようだ。
しばし、ぼくはトリコさんに見入った。
「おれがかっこいいからって見惚れるなよ」
軽口を叩くトリコさんから、さっきまで吸っていた葉巻樹の香りがする。
「かっこいいんだから見ちゃうのは仕方ないですよ」
うん、見入ってしまうのは仕方ない。
「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか」
トリコさんが笑いながらぼくの顔を片手で引き寄せた。バランスを崩れそうになるが、ふんばる。
かつてないほど近い距離にある顔と顔。
体温を感じる距離が落ち着かない。
これは果たして、空に憧れる感情と同一のものなのか?
「見上げれば夜空とあのひと」 ココマ
珍しくココさんにハントに誘われて、ふたりきりだった。
いつもはトリコさんと三人だったりするけど、ココさんと夜を明かすのは珍しい。
トリコさんがいると晩ご飯の準備で忙しい。だからこんなにも落ち着いた野宿ははじめてだった。
静かだ、でもその静けさが苦にならない。
途切れることのない会話は穏やかで優しい。
「流れ星」とココさんがいうので反射的に顔をあげれば、遅かったのかひかりの筋さえ見えなかった。
流れ星なんて街だと見えないから、残念だと呟けば、
「もしかしたら小松くんの目で見えなかったかもしれないよ」
ココさんはフォローしてくれた。
ココさんの視界は常人では目にできない電磁波を視ることができる。流れ星は、ひとの目では捕らえられない距離のものだったと言いたいらしい。
優しいひとだと思った。
もっと多くのひとと出会えば、出会ったひとだけココさんを理解してくれると思う。
夜のような孤独さを感じなくてすむのだと思う。
見上げれば夜空。
星よりも孤独に輝くひとがぼくの目の前にいます。
「大地よ」 トリココサニコマ
「みなさんって、空をイメージするひとが多いですよね」
小松の突拍子もない台詞に、トリコ、ココ、サニーはすぐにつっこみができなかった。
「トリコさんは空、ココさんは夜空、サニーさんは太陽」
イメージというが、それは小松の視点であって、例えられた当事者たちは微妙な顔をした。
小松の台詞が褒め言葉なのが救いだと三人は思う。
「なら小松はなんだ?」
トリコが聞く。自分のイメージなどこたえられる訳もなく、小松は唸った。
真剣に考える小松の横でトリコが言う。
「おかん?」
「なるほど母親か」
ココが納得する。
「トリコみたいな子供は手間かかるし、松の苦労は見えたな」
サニーも便乗した。
「なんでぼくがトリコさんのお母さん設定なんですか?」
小松のつっこみで話題が膨らみ活気づく。
大地なる小柄な男は今日も元気だ。
「空」をイメージした3本でした。