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WJ連載中「ト/リ/コ」の腐/女/子サイト  【Japanese version only.】

2025'04.06.Sun
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2010'09.23.Thu

ちょっと息抜き。
今さらながらちゃんとタイトルを考えなかったのが悔やまれる。


リーマンココマ 2

 つるつるした布地の感触に小松は違和感を覚えたものの、気持ちよさに頬ずりした。柔らかい枕はいい香りがして眠気を誘う。
(あったかいなー)
 日に日に朝が涼しくなるこの時期は毛布の調整が難しく、暑いと蹴飛ばして朝方に寒いと毛布を手繰り寄せることもたびたびあった。
(どこだろ、ここ?)
 瞼を閉じたまま身じろげば、なにかに引き寄せられた。
(誰かいる?)
 びっくりした小松は瞬時に覚醒した。
(そもそもここは何処だ?)
 カーテンの隙間から差し込む光だけでは室内は薄暗いが、かろうじて相手の認識はできる。
 抱きしめられた体勢で首を上げれば整った顔立ちがあった。記憶がついてこない小松は一瞬誰かと考えるが、昨日、会ったばかりの上司だと思い出す。
 仕事が終わってココに食事へと誘われて、アルコールを飲んだまでは覚えているが・・・。
(まさか酔い潰れた?)
 いやな予想だがそれ以外に考えられない。地方から出てきた小松は都会の生活と新しい支店に馴染むのに必死だった。内部の空気も悪く、だめな料理長だと自己嫌悪するあまり睡眠不足に陥っていた。
 偶然にも通勤途中で出会った青年が会社の上司で、小松の才能を認め、きっかけを投じてくれたおかげで副料理長との仲も改善された。いきなりすべてをよくできないが、徐々に関係をよくしていけばいいのだと思い小松の肩の力は抜けた。
 アルコールが入ってすぐに潰れてしまっても仕方ないが、言い訳より先にココに謝ろうと小松は反省した。酔い潰れた小松をココが泊めてくれたのは考えなくてもわかる。
 小松はココの腕をのけて布団から抜け出す。その際、触れたココの体温が直接感じて小松は「あれ?」と思う。寝苦しさを考慮して、ココが小松のズボンを脱がせたのも、ネクタイもほどいたのも、シャツのボタンが外すのもわかる。
「おはよう、小松くん」
 小松が起きた気配につられて起き上がったココの上半身は裸だった。いや、上半身だけでない。素足だったのを小松は肌で直接感じた。
「気持ち悪くない? ワインを一杯飲んだだけで潰れたからびっくりしたよ」
「ご、ご迷惑をおかけしました」
「迷惑じゃないよ。おいで、洗面所を説明するよ」
 と言ってベッドから降りたココはやはり身になにもつけておらず、小松は同性だというのに目のやり場に困った。ココはすぐにガウンを羽織り、しなやかな肢体が隠れて小松は安堵した。
「裸で寝ると風邪ひきますよ」
「頑丈なんでね、風邪はこの数年ひいたこともない」
 ココが案内した洗面所は広く、戸棚(小松では決して背が届かない高さに位置する)にある新品の歯ブラシと洗いたてのタオルを小松に渡した。
「ぼくは眠気覚ましにシャワー浴びるから、小松くんはキッチンでお茶でも飲んでいて。勝手に使っていいから」
「なら一緒に朝ごはんを食べませんか? 泊めてくださったお礼に用意させてください」
「嬉しいけど、冷蔵庫にはろくなものがなかった気が・・・」
「お米があればどうとでもなりますよ!」
 小松は自信持ってこたえたが、台所に入ればココがためらう理由もわかるぐらいなにかが足りなかった。
「お米はあるのに炊飯器がないのは何故だろう?」
 鍋で炊こうと考えていたが、棚を開けばスチームケースを発見してバターライスを作る。肉っけは真空パックにつめられた生ハムやベーコンブロックしかなく、野菜はささやかなものだった。新鮮なミニトマトとハムをマリネして、早めに救済が必要な野菜はまとめて煮てジャガイモでとろみをつけてポタージュにする。
 ココがシャワーを浴び終える頃にはテーブルは豪勢になっていた。着替えたココが感嘆の声をあげる。
「おいしそう。この短時間でよくここまで作れたね」
「ペース配分ですよ。下準備ができたら放っておけばいいものばかりなので、手抜きといえば手抜きですけど」
「朝から小松くんの料理が食べられるなんて嬉しいな」
 大袈裟なココの喜びように小松は苦笑した。
「ココさんなら、誰だって喜んで作ってくれますよ」
 小松は風呂あがりのココに水分補給の水を渡す。
 台所は住む人を反映する場所だ。使い方、置かれたもの、食器の種類。ココが台所をあまり利用していないのはわかった。下世話な言い方をすれば、食事を作る恋人が現在いないという意味だ。
「作ってもらって、嬉しいひとと嬉しくないひとがいる」
 ココの口調が冷たくなる。
「でも小松くんに作ってもらえるのは嬉しい」
「ありがとうございます」
 自分がココを知る以上に、ココは自分を知っていると思う節を小松は感じる。上司だから、スカウトする際にいろいろ調査をしていてもおかしくないが、小松は腑に落ちなかった。
「仕事は何時に出られますか?」
 小松は本日オフである。
「昨日は会議があったから早く出たけど、今日は10時までに出社すれば大丈夫。ゆっくりご飯を食べるよ」
「今日は社員証を忘れないでくださいね」
 小松がからかい混じりに言えば、ココは苦笑した。
「駅まで送るよ。帰り道はわからないだろ?」
「お願いします」
 なごやかに朝食がはじまる。転勤するまで家族と住んでいた小松は、ひとりでご飯を食べる朝が少し淋しかった。誰かと並んで食事なんて久しぶりで嬉しくなる。同じ職場の人間のせいか、知り合った時間は短くても気安さがあった。ココの話術の巧みさ小松は感心する。
 ココにコーヒーを淹れてから小松は食事の後片付けをはじめる。手伝うと言ったココを断ったのは、自分と違ってこれから仕事の彼に余計な体力を使わせたくなかったのだ。
「そのパーティーエプロン似合うね」
 背中から聞こえた楽しげな声に、小松はあきれた。
「ピンクが似合っても嬉しくありません。でも肩紐がないので首が凝らなくて長時間着ても大丈夫そうですね」
「IGOブランドで、試供品として5色も渡された時はなんの嫌がらせかと思ったよ。でもきみが着てくれたからよしとするか」
「意味がわかりません」
 小松は笑った。屈託のない笑い声だ。ココの思惑など、欠片の察しない健全な思考の持ち主である。
 ココはコーヒーをすすりながら小さな背中を見つめた。酔い潰れるのは、疲れている様子だったのでお酒を勧める前から想像できた。まさかワイン一杯で潰れたのは予想外だったが。
 小松を自室のマンションに連れて帰り寝苦しさを考えて服を脱がせたが、それだけで終わらせた自分を褒めてやりたいとココは思う。
「本気なんだけどな」
「エプロンがですか? やめてください」
 否定しながらも明るい声で小松はこたえた。
 無防備に眠る小松の背中に、赤い跡をつけた独占欲ぐらい見逃してほしいと、誰に許しを乞う訳でもなくココは思った。寝起きにシャワーを浴びる習慣などないココだが、小松の匂いをかいで目覚めた朝に危険を感じて抜いた。小松に己の雄を突き立てたい欲望がある。
「いずれ、ね」
 しかし今が時期でないのは判断できた。
「なにか言いましたか?」
 無邪気な声に、ココは「独り言」とおどけた調子でこたえる。はじまったばかりだ、焦る必要はない。
(いずれ)と、ココはもう一度心のなかで呟くのだった。

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